確定申告の時期になりました。iDeCoの掛金について所得控除の申告が終わっていない方は、一番人気の税メリットを捨ててしまうことのないよう、忘れずに期限内に申告してメリットを享受してくださいね。今回は、iDeCoならではの税制優遇の活かし方について触れてみたいと思います。

積み立てしている間のメリット

iDeCoは、毎月2万3000円積み立てしたとすると、課税所得300万円で所得税率が10%の場合、所得税と住民税合わせて5万5200円(復興特別所得税を加味せず試算)もの税が毎年還付され、税負担が軽減されます。積立初年度にはその還付額の大きさに感激した方も、毎年となると慣れてしまってなんとも思わなくなっているかもしれません。

そうなってくると、還付されたお金はどこに消えているでしょう? 私の場合、その金額をきっちり何かに充てて使ったり、貯めたりしてはいません。そういう方、実は多いのではないでしょうか? その分を消費していないとすれば、いったん私の資産に入るものの、次年度の積立原資に回っていることに気づきました。つまり、積み立て2年目以降は、掛け金の全額ではなく、上記の例でいえば8掛けの資金で積み立てができているということです。

よく比較される「つみたてNISA」と比べてみると、つみたてNISAは積み立てる全額を新たに用立てる必要があります。つみたてNISAは60歳前を含め自分が必要と思うタイミングで引き出せる代わりに、全額を用立てる。一方で、iDeCoは老後という遠い将来の自分のために今の自分が仕送りするような仕組みです。そのありがたさを実感できるのは相当先なので積み立てを継続するモチベーションを保つのが難しいのですが、「積み立て」という一度セットすれば手間がかからないことに加えて、今メリットが感じられる税負担軽減があるからこそ「老後資産準備」に取り組みやすい秀逸な仕組みになっています。

積立時のメリットを大きくするには

掛け金の所得控除というメリットを大きくする方法は3つあります。

1つは、掛け金額を大きくするという方法です。多くの方が、この方法でメリットを大きくしようと考えますが、何事も無理は禁物です。目先の税還付額を多くするために掛け金額を多くした結果、今の暮らしが窮屈なものになったり、60歳以前に起きるライフイベントに対応できなくなったりするのでは意味がありません。iDeCoの積立額は60歳以降にしか使えない資金に充てていい範囲に留めることをお勧めします。

2つめは、積立期間を長くするという方法です。なるべく若いうちから積み立てを始めて、休まず長く続ければ、1年あたりの税還付額は多くなくてもトータルでは大きなメリットを受けることができです。現在、iDeCo口座を保有している方は300万人(2021年11月時点)いますが、そのうち76万人の方は積み立てをお休みしてしまって残高の運用だけをしています。残念ながら、掛け金の所得控除メリットを自ら放棄してしまっている方々です。最低積立金額の5,000円さえ積み立てれば、口座管理料を上回る税の還付があるにもかかわらず、口座管理料分目減りさせながら残高の運用をされています。

その多くが前のお勤め先で企業型確定拠出年金制度に加入していて、転職とともにiDeCoに資産を移した方々です。企業型確定拠出年金は退職金制度として会社が掛け金を出してくれていたので、iDeCoになって自分が掛け金を出すことは「損」というような思い込みがあるようなのです。大変もったいないと思います。今年5月からは、法改正によってiDeCoの加入(=積み立て)について年齢要件が撤廃されますので、60歳以降も会社員や公務員として働き続ける方々は65歳まで加入することができるようになります。該当する方はぜひ大いに活用して長く積み立ていただけたらと思います。

3つめは、今頑張って働いて所得を上げるという方法です。ご存じの通り、所得税は課税所得に応じて税率が決まります。税率が変わるような報酬アップは容易なことではありませんが、区分が一つ上がればiDeCoの掛け金は同じでも所得控除によって税負担軽減額は大きくなります。

今年10月からは従業員数500人~101人以上の企業でパートやアルバイトとして働いている方々への社会保険の適用拡大が行われます。2016年に501人以上の企業で実施された際には、扶養の範囲内で働いていたパート・アルバイトの方が適用拡大を機に、扶養の範囲にこだわらず多く稼ぐような働き方を比較的選択されていました。これに倣うと、今回も扶養の範囲を外れて課税所得が発生する方が相当数出てくると思われます。現在、3号被保険者でiDeCoの積み立てをしながら掛け金の所得控除メリットが受けられていない方は9万人いらっしゃいますから、まさに所得を増やしてメリットを受けられるようになる方が少なからず出てくると思います。

3つの中からみなさんが選択可能な方法を上手に活用して、積立期間中のメリットをぜひ大きくしてください。