金融機関の本支店でリテール営業に関わっている人たちは、個人のお客さまに保険を含む金融商品を販売したり、銀行であれば住宅ローンなどのローン商品を販売したりしています。そして個人の方の多くは、担当者を「金融のプロ」であると受け止め、そのアドバイスを参考にして資産運用・管理、ローンを活用した資金繰りなどの算段をつけています。

ただ、ここで問題になるのが、本当に彼らのアドバイスが100パーセント、お客さまの側に立ったものなのかどうか、ということです。

かつて金融業界で「質より量」を求められた営業ノルマ

私はかつて2年ほど、証券会社の支店営業として働いていたことがありました。株式や債券、投資信託などさまざまな金融商品を販売するために日々、営業活動をしていましたが、お客様の資産を増やすために営業活動を行ったという記憶が、まったくといって良いほどありません。では何のために営業活動を行っていたのかというと、すべては自分に課せられたノルマを消化するためでした。

ノルマの語源をご存じでしょうか。ちょっと調べてみました。この程度の知識はネット検索をかければ簡単に出てきますが、それによるとラテン語のnormaから派生した言葉で、もともとは「基準」とか「規範」の意味だったようです。それがかつて社会主義国だった旧ソ連など東側諸国において、労働の達成度合いを明確に示すための「割当」という意味合いで用いられるようになりました。

つまり、ノルマは強制的に上から割り当てられるものであり、何が何でも数字であり数量を達成することが求められます。つまり「質より量」が優先されます。

近年においては、この「ノルマ」という言葉で連想されるイメージがあまりにも悪いからか、「販売目標」という言葉に変えている金融機関もありますが、根本的には何も変わっていません。私が支店営業だった時も、上司はことあるごとにこう言っていました。

「これはノルマではない。あくまでも販売目標だ」。

単なる言葉のすり替えですよね。ノルマと目標は意味合いが全く異なります。

では、具体的には何に対してノルマが課せられるのでしょうか。私自身の経験上、証券会社をベースにして説明していきますが、このノルマは「各種手数料をいくら稼いだか」という点が評価軸になっています。